人生100年時代と言われ、超高齢化社会を迎えようとしている現代において、自宅で介護をするご家庭も増えていますし、もはや認知症と向き合うことは避けて通れなくなっていると言えるでしょう。
そこで、誰の身の上にも起こりうる認知症の介護について、なるべく病気の進行を遅らせ、介護する側もされる側も少しでもストレスが軽減できるよう、お世話をする際の3つのポイント(心構え)をご紹介します。
ストレスレスな介護をするための3つのポイント(心構え)
1.尊厳を守る
認知症になったからといってプライドまで失うわけではありません。少し前までは認知症は痴ほう症と呼ばれ、社会全体の知識も乏しく、非人間的に扱われてしまうことも少なくありませんでした。しかし今では「高齢者虐待防止法」も施行され、認知症の方々の人権が侵害されないよう、介護者にも正しい知識や介護のポイントを理解することが求められています。
介護者は、認知症患者に「あれができない」「これも分からない」と、できなくなった症状ばかりに目を向けるのではなく(そうすることは介護者本人もストレスになります)、かつては社会の一員として働いたり、子どもをしっかり養育してくれたりしていた方々だと敬意を払って、もしも自分が認知症になったとしたらして欲しいと思えるようなお世話を心がけましょう。
2.できることは本人に
認知症と診断されても、本人にできる家事や作業などはまだたくさんあるはずです。なるべくできることは本人にやっていただくようにお願いしてください。
ただ、高度な記憶力や判断力を必要とするような複雑な作業はスムーズに行えないかもしれません。その際は介護者と一緒に会話しながら分担して行うのがよいでしょう。
例え家族に手助けされてできたことでも、まだ頼りにされているという自信や達成感が得られ、日常生活にも張り合いが持てます。
作業を一緒に行うときの3つのポイント
・作業は1つずつ、シンプルにお願いする
・さりげなく手伝う
・褒めて感謝の気持ちを伝える
例えば、お茶を入れてもらおうと思ったら、「お茶飲みたいな。入れてもらえる?」ではなく、「お茶が飲みたいから、お茶っ葉を急須に入れてもらえる?」と具体的に言ってお茶の葉を入れてもらい、「ありがとう」と感謝してから、「じゃあ、急須にお湯も入れてもらえるかな」と言ってお湯も入れてもらう、あるいはそこは自身でやるなどして、頼み事は1つ1つ明確にお願いするようにします。
そして今度は急須からお茶を湯吞み茶碗に注いでもらい、必ず「ありがとう。やっぱりお母さんが入れたお茶は美味しいね」などと言って感謝の気持ちを伝えたり褒めたりします。
こうすることで、信頼関係や自尊心が保たれ、自分が必要とされているという自覚で意欲がわき、もっといろいろなことをやりたいという次の行動につなげることができます。自分の居場所や役割を日常の中で感じてもらうことがとても大切です。
3.五感を刺激し、楽しめるケア・トレーニング
認知症の進行を少しでも遅らせるためには、五感を刺激するようなケアやトレーニングがいいリハビリになります。五感を刺激すると、脳の各部位が活性化されるためです。
例えば、毎日の清拭時にも、季節の花を飾ったり(視覚、臭覚)、好きな音楽をかけてあげたり(聴覚)、軽くハンドマッサージをする(触覚)などして、五感を刺激しながらケアします。
また、日々のトレーニングとしても五感を刺激するようなものが効果的です。下記のような指先を使ったり、素材の触感を楽しんだり、完成させることで達成感が得られるようなものが良いでしょう。
◆折り紙、ぬりえ<視覚・触覚>
◆しゃべるぬいぐるみ<触覚・聴覚>
◆パズル<視覚・触覚+脳トレ>
◆フラワーアレンジメント<視覚、嗅覚>
【注意点】
介護者が一緒にトレーニングを行う際は、次の点に注意しましょう。
・決して無理強いはしない
認知症のトレーニングに良いからと、苦手で嫌いなことを無理やりやらせても、本人のストレスになるだけで、却って症状が進行してしまう恐れがあります。また、その時の体調や気分にもよりますので、本人が望まないことは避けて、違うトレーニングを行うようにしましょう。
・子ども扱いしない
認知症の高齢者が子どものような言動をしても、決して子どもではありません。子どものように扱って本人のプライドを傷つけないよう注意しましょう。本人の意思を尊重し、やりたいことを楽しくやらせてあげてください。
・心と体と頭を使う
トレーニングは、心と体と頭を同時に刺激するとより効果が上がります。大きな動きができなくても手や指先だけでも動かしたり、話しかけたり褒めたりすることで心も動きます。また、なるべく本人に自分の力でやらせて頭を使うように意識して行いましょう。