現代教育に「共同」というキーワードがあります。グローバルなこの時代、情報化社会の今だからこそ、「共同」や「提携」「共生」といった考え方が学習のなかに求められるようになっています。
スマートフォンの普及で子どもたちのコミュニケーション不足が深刻化するなか、ここではそんな現代に必要な、共同でひとつの物を作るという「共同製作」について、そのメリットや指導する際のポイントなどをご紹介します!
共同製作のメリット
園や学校での共同製作はもちろん、家庭内でも家族がみんなでいっしょにひとつの物を製作することは、子どもにとって実に多くのメリットがあります。
1.仲間と協力して目標を達成する力を養う
工作など何かを作る作業はひとりでやるものが多く、これまで家庭内はもちろん、幼稚園や小学校などの図工の時間も1人ひとりが各々の作品を作るというスタイルが圧倒的に多かったと思います。しかしながら、これからは「共同」ワークも求められる時代。みなでひとつの物を完成させるという共同製作を行うことで、個人レベルではなく、仲間と協力し合って大きな目標を達成させる、チームワーク力が必要です。どう協力し合えば、いかに早く、きれいに、目指している物が作れるのか、みなで考え協調する力がつきます。
2.コミュニケーション能力の向上
共同製作をする上で、何より重要なのがコミュニケーション力です。コミュニケーション力はこれからの時代に必ず求められる能力で、進学や就職にも大きく影響するので特に重要視されています。大勢で共同作業をするにあたり、より早くよりいい物を制作せるためには、それぞれの得意分野を上手に活かすのがいちばんです。みなを仕切って進行するのが得意な子ども、アイディアが豊富な子ども、手先が器用な子ども、色づかいが上手な子ども、図形や立体感覚に優れている子どもなど、それぞれの得意な能力をフルに発揮させるためにはコミュニケーション力がなければ始まりません。作業のスタート時にはぎこちなく話していた子どもたちも、作品が完成するころにはすっかり慣れてコミュニケーションが上手に取れるようになり、これを繰り返すことでコミュニケーション能力が向上していきます。
3.個人だけでは得られない楽しさや喜びと達成感
学校の平常授業では圧倒的に個人でひとつの作品を作るスタイルの授業が多いと思いますが、展覧会などの催しものがあるときにはクラスや学年みんなでひとつの大きな作品を仕上げることも少なくありません。製作する過程においては、仲間といっしょに作業を楽しんだり、ときには意見が対立したりすることもあるかもしれません。それでも作品の完成後には、個人で製作するときとはまた違った感動や喜び、学びがあり、達成感もひとしお大きなものとなるでしょう。
共同製作を行う際の指導者や親が注意するべきポイント
◆材料の形や特徴をもとに工夫して楽しい造形活動ができるようにする
指導者や親は、子どもたちが紙や粘土、布やフェルトなど、その材料の材質や形、特徴を活かし、それぞれに工夫したオリジナル作品が作れるように促します。
◆事前に参考作品を見せたりイメージを膨らませたりして、作る意欲をかきたてる
材料を与えていきなり「さあ、みんなで何か1つのものを作りましょう」と言っても子どもたちは困惑するだけです。まずは、製作する前にいろいろな参考作品を見せたり動画を見せたりしてイメージを膨らませ、「こんなの作ってみたい」「できたらいいな」と創作意欲をかきたてるようにします。
◆それぞれがアイディアを出し活発に話し合えるようにする
せっかく複数の子どもたちが協力し合って製作するわけですから、得意な子どもや活動的な子どもだけがせっせと行動し、あとはポカンと見物しているだけでは何の意味もありません。誰もが発言しやすい作業場作りだったり、全員がきちんと製作に関われるように、指導者や親は常に配慮する必要があります。
◆クラスなど人数が大勢の場合は、必要に応じて適宜グループに分けて活動させる
大人数の場合にはいくつかにグループに分け、それぞれのグループごとに共同製作させてそれらをさらにまとめて一つの大きな作品にするという方法もありますし、グループごとに違う製作をさせて完成品を発表するという方法もあります。後者は少人数となるため、全員が責任ある立場で行動しやすいということと、グループ間の競争意識が芽生え、グループ内のチームワークが向上するというメリットがあります。
出典:「子どもたちと作るパズルアートドレス」f-pzl