わずかな睡眠不足が、まるで借金のようにいつの間にか溜まってしまう「睡眠負債」。日々の生活の質を下げるだけでなく、認知症のリスクを高めることも明らかになっています。
ここでは、睡眠と認知症の関係、また睡眠負債にならないための3つの習慣をご紹介します!
CONTENTS:
1.あなたの睡眠量は足りている?睡眠負債チェック!!
2.症状別にみる睡眠負債自己診断
3.脳内のゴミ掃除は睡眠で行われる!
4.日中の活動量が睡眠負債に比例する!
5.日中にメリハリある活動をするための3つの習慣
1.あなたの睡眠量は足りている?睡眠負債チェック!!
まずは今の状態を知ることから始めましょう。
下記の項目で、最近の状況について思い当たるものにチェックを入れてください。
□午前中、10~12時くらいに何度もあくびが出る→(a)
□朝起きた時に倦怠感があり、頭が重い→(b)
□放っておくと休日はいつまでも寝てしまう→(c)
□平日の睡眠時間は6時間以下だ→(d)
□電車で座れると寝てしまう→(e)
□キャンディをガリガリと噛んでしまう→(f)
□机の上の整理整頓ができない→(g)
□タンスの角に小指をぶつける→(h)
上記の項目にチェックが入った人は、睡眠負債の可能性があります!!次の「2」で上記(a)から(h)までについて解説します。
2.症状別にみる睡眠負債自己診断
◆a.一般に、睡眠時間の長短に関係なく、起床してから4時間後は最も脳の活動が盛んで、1日の中でいちばんよく頭が働く時間帯といわれています。その時間帯にあくびが出るようであれば、睡眠不足の可能性が考えられます。
◆b.朝は自律神経のうちでも活動的な「交感神経」の働きが高まる時間です。特に疾病もなく、睡眠が十分足りていれば倦怠感などないはずです。
◆c.休日でもいつも通りに目が覚めれば、日ごろの睡眠が十分と言えますが、いつまでも起きられないのは睡眠負債である可能性が高いでしょう。
◆d.理想の睡眠時間にはもちろん個人差がありますが、さまざまな調査の結果、一般的に成人なら7時間が1つの目安とされています。6時間以下の睡眠を続けていると、睡眠負債になるリスクがかなり大きくなるといえます。
◆e.深夜は別として、電車に揺られて眠くなるのは、睡眠が不足していると考えていいでしょう。
◆f.キャンディをガリガリ噛むという行為は、「リズム運動」と呼ばれ、セロトニンを分泌し、気分をよくする効果があります。睡眠不足によるセロトニンの減少で、無意識に噛む行為をしている可能性があります。
◆g.整理整頓ができなくなるということは、物事の優先順位が判断できず、処理能力が落ちているということです。複数の情報を処理する働きは脳の前頭葉で行いますが、睡眠不足では前頭葉がうまく働きません。
◆h.うっかり足の指をどこかにぶつけてしまうのは、脳の覚醒レベルが落ちているために、脳のイメージと実際のカラダの動きにズレが生じているためです。
3.脳内のゴミ掃除は睡眠で行われる!
認知症の原因の1つに、脳内のゴミ(老廃物)「アミロイドβ」というタンパク質が過剰に蓄積することが病因と言われています。一般にアミロイドβは昼に溜まり、睡眠中に除去されると考えられています。いわば、睡眠が脳内のお掃除ロボット的な役割をしてくれているわけです。つまり、脳内をゴミ屋敷化しないためにも、質の良い睡眠が必要なのです。
【その他の弊害】
認知症以外にも、睡眠負債による弊害はいろいろあります。
◆太りやすくなる
◆体臭がきつくなる
◆血圧が上がる
◆集中力、思考力などの脳機能が落ちる
◆うつ病などの精神疾患の要因になる
それでは、どうすれば質の良い睡眠がとれるのでしょうか。
4.日中の活動量が睡眠に比例する!
米国で高齢者を対象に調査したところ、日中の活動量が少なく、夜の睡眠の質が悪くなっていることが多い高齢者では、約5年後に認知症やその手前である軽度認知障害(MCI)になる頻度が1.57倍高いという結果が出たそうです。また、日中のメリハリのない活動リズムが、アルツハイマー病の発症と関連していることも動物実験から裏付けられているとのこと。よく眠るためにも、日中は活動的に過ごした方が良さそうですね。
特に1人暮らしの高齢者に多いのが、日中テレビをボーっと見ながらうとうとしてしまうこと。これでは夜ぐっすり眠れないのは当たり前です。同じテレビを見るのでも、何かをしながら見ることをおすすめします。できれば頭や指先を使うなど、テレビとは別の思考ができるものが良いでしょう。
5.日中にメリハリある活動をするための3つの習慣
それでは睡眠負債にならないよう、日中にメリハリある活動をするためには何をしたらいいのでしょうか。ここではぜひおすすめしたい3つの習慣をご紹介します!
1)軽い運動
有酸素運動をすることで、脳のゴミであるアミロイドβを分解することができると言われています。また、「運動不足は脳の萎縮につながる」というアメリカの研究発表もありますので、夜しっかり眠るためにも、日中にカラダを動かすのはおすすめです。
軽い散歩や音楽のリズムに合わせて身体を動かしたり、歌を歌ったり、手を叩いたりするだけでも効果的があります。大切なのは、無理をせずリラックスして楽しみながら身体を動かすことです。
2)コミュニケーション
人と会話することは脳を活性化させ、ストレスの解消にもなると言われていますので、できるだけ日中に家族や仲間とたくさん話すことをおすすめします。また、人間は社会的動物なので、他人との交流が何よりも脳を刺激し、生活を豊かにしてくれると考えられています。仲間と交流する、共同作業を行う、多くの人に自分の成果を発表できるような機会をもつなどすることで、自然と睡眠の質も上がるでしょう。
3)脳トレ
手軽に認知症を予防する方法として、脳を活性化する、いわゆる「脳トレ」があります。つまり、脳を使うトレーニングのことで、「考える」「挑戦する」「判断する」などの行為を楽しみながら行えるものです。
代表的なものとして、パズルや計算、読み書き、ゲームなどがあります。特にパズルは、数字パズル(ナンプレ)や立体パズルなど、どのようなものでも認知症の予防になると言われています。
日中にうとうと寝てしまわないように、テレビを見ながらも、できる限り手や脳を動かし続けるようにしましょう!
上記1~3の習慣は、できれば複合的に行えるとなお効果的です。例えば仲間とコミュニケーションをしながら散歩や脳トレをすれば、さらなる相乗効果が期待できますよ。